最寄り駅徒歩12分という決して利便性の高い場所とは言えない立地環境において、通常であれば分譲価格重視で区画割をできうる限り小さくした3階建の狭小住宅とするところであるが、地元業者へのヒアリングなどによる市場調査に基づき、需要が見込めコスト的にも抑えられる2階建の住宅が建築できる最小ロットを基準とし区画割を設定した。また、デザイン事務所と共同企画設計を行い、外観、景観デザインなどを重点的に整え、いわゆる「建売住宅」に食傷気味な購買層に近傍他社物件との差異を訴えることにより、商品性を第一に求める顧客深耕を試みた。特に、1階のハネ出しスラブを活用した「シリンダー」と呼ばれる建物を浮かした形状は、本物件の象徴的なデザインとなっている。仕入、開発、設計、施工、販売まで自社グループにおいて行うことで、事業効率を向上させると同時に物件の特性を顧客に直接発信することで、開発者の意図を顧客に伝えることに成功した。また、グループ内で実績のあるカスタマイズシステム「ライフパレット」や本社ショールームを活用することで建築中にお ける販売効率の向上を図った。

起伏の中に美しい森や公園が点在する板橋区景観最重点地域内に計画された、14棟の木造建売分譲住宅である本件は、緩やかな南面傾斜の絶好のロケーションの中に形成されている。周辺の豊かな環境と共生をコンセプトに考え、経年劣化に耐えうる低彩度/整数比の建築デザインを実施。また、販売ニーズの高い各戸の個性を外観形状 に置き換え、環境への影響が大きい色彩に関してはトーン&マナーを設定することで、個性と一体感の「相反する要素」を整理することで解決し、瀟洒な街並みを演出した。景観最重点地域ということで、板橋区景観条例(板橋崖線軸地区)に則るだけではなく、環境負荷が少なく、同時に住民が簡単にメンテナンスできる施策をとっている。エリア周辺に棲息する植物をベースに各戸の住民が簡単に手入れできる植栽、雨や住民による打水でヒートアイランド現象を抑制する保水性の高いインターロッキングを開発道路に全面実施、環境配慮型植生用ブロックを駐車エリアに導入するなど、住民みずからメンテナンスを行い ながら環境貢献できる外構計画を実施している。

いわゆる「建売住宅」とデザイン的な特徴で差別化を図ることにより、集客、成約歩留まり共に非常に効率良く成果を出すことができた。
・夜のライトアップをした外観パースを前面に打ち出したチラシの投函を行い、7件/万部の集客を図ることができた。
・成約歩留まり14戸/60組23%こだわりのある個々のお客様の要望を積極的に受け入れることで、大半の棟を完成前に成約させることに成功した。
また、一斉引渡しの際に、入居後のコミュニティーづくりのきっかけや、ゴミ出し集積所の管理当番などの運営の仕方などを話し合ってもらうため、 入居者同士の“入居者パーティー”を当社が主催し、顧客からの評価を得た。