本物件は中野区の青梅街道沿いの１区画において、等価交換を含む土地の有効活用による分譲マンションの建設が目的であり、12人もの権利者に対して所有地の売却若しくは、土地買取り後の買戻しによる優先分譲形式の提案を選定いただくという難易度の高い事業でした。本敷地の権利者は所有権者・底地権者・借地権者等12人、借家人14人併せて26人におよび、事業説明から用地取得に至るまで、実に３年近くの歳月を費やしております。
またそれら権利者のうちの８人は等価交換を希望していたため、居住階・間取り等の合意を得た上で事業計画を推し進めてまいりました。
事業計画においては、「中野坂上」駅徒歩２分という立地から単身者・ディンクス世帯をメインターゲットとする一方、ファミリー世帯も一部取り込めるような販売面積の設定をしております。主に25㎡・35㎡・45㎡・55㎡・60㎡の５タイプにて構成し、間取りについては1DKから3LDKまで用意しました。(地権者住戸除く)

外観デザインについては無彩色の磁器質タイル貼りとし、２色のモノトーンタイルの貼合わせによって作り上げられた陰影が、建物に豊かな表情をもたらしております。また北側のバルコニー手摺面には白いキャンティスラブを何枚も張り出すことで、水平方向に対してリズム感のある外観としました。なお北側の妻側住戸バルコニー手摺はボーダーストライプのパターン貼りとし、その中でも豊かな開放性と眺望が期待できる上層階についてはストライプフィルムをガラスにて貼り合わせたゼブラガラスを採用することでインパクトのある建物ファサードを演出しました。なお妻側面の出窓についても、上下の白いスラブを水平方向に張り伸ばし北側立面との一体化を図っております。

プランニングについては南側一帯が低層地域であるため、2LDK～3LDK住戸の主開口が極力南側を向くような配置とすることで日照に配慮するとともに、バルコニーを全面ガラス手摺とすることで豊かな眺望が確保できるようにしました。(２～３階バルコニー手摺を除く)また北側に主開口をもつタイプについては、販売面積及び販売価格を抑えるため25㎡の1DKタイプ及び35㎡の1LDKタイプとして計画することで、早期完売を図りました。

間取りについては、住戸内の玄関ホールからリビングまでの廊下面積の最小化を図り、室内レンタブル比の向上と効率的な居室面積の確保に注力しました。なお全ての住戸で季節ものを丸ごと交換・収納できるアッパーキャビネットを標準装備することで収納容量の大幅な向上を図っております。また45㎡のＢタイプについては可動式クロゼットを標準装備することで、入居者が自身のニーズに合わせた間取りを作れるように工夫しました。
共用廊下についてはホテルライクな内廊下で計画することで入居者のプライバシー及び騒音防止対策に配慮するとともに、落ち着いた空間デザインとしました。
外構計画については、アプローチ部分において隣接する店舗部分と居住部分のエリアを明確に分けるため、計画道路による建物後退部分を利用し、3m程度の高さの門柱を５門設けエントランス空間へと向かうシークエンスの高級感を高める計画としました。
駐車場は建物東側に５台、西側に２台、店舗ごとに１台の計９台設置しております。東側の駐車場については出入庫の利便性を考慮しターンテーブルを設け、幹線道路に面する車路出入口については、車路管制回転灯を設置することで歩行者の安全性に配慮しました。

本物件の販売価格は当時販売中であった周辺物件の分譲価格より割高で、なおかつ中野坂上駅徒歩圏内では最高値の販売坪単価でしたが、弊社の徹底した「入居者目線でのものづくり」を購入者に理解していただいた結果、値引きなしでの全戸完売に結びついたのだと確信しております。
北側住戸については、主たる住戸を25㎡と小振りな専有面積に抑え、北向きでも販売に影響の少ない投資用分譲住戸とすることで販売リスクの回避を考慮しました。その結果、北側住戸の販売会社への専有卸が早期に決まったため、当社は南側住戸と北側角住戸という条件が良いタイプの販売に注力することができました。
また優先分譲住戸の間取りについては販売住戸と全く異なっていたため、毎月地権者宅へと足を運び、間取りのチェック・修正を重ねてまいりました。竣工時には外観デザイン・エントランス・間取り全てに対して大変喜んでいただき、引渡し後も良好な関係を築いております。
建物竣工時には歩道の通行人が足を止めて建物を見上げるなど、圧倒的な存在感を感じさせる佇まいとしつつも、周辺住民からは素晴らしい建物ができたなどとお褒めの言葉もいただき高く評価されたと感じております。結果的に、中野坂上の街並みを引き締めるような建物を完成させることができたと思います。