本事業は京都市東山区という、「知恩院」「八坂神社」「平安神宮」等の観光名所へのアクセスが非常に良い立地で、築28 年の事業所ビルをホテルに用途変更したプロジェクトである。周辺にはビジネスホテルが多く海外からの旅行者向けのホテルが少なかったため、メインターゲットを海外からの中長期滞在者とした。

土地建物取得時は、地下１階の駐車場用途の部分に既存テナントが営業し、６階のバルコニー部分が建物内部として申請なしで増築されているなど、建築基準法上の問題があったが、本事業の用途変更に併せて解消し、遵法性を確保した。

また、１階の受付以外の空間は、朝昼はカフェと着物の着付け、夜はバーという時間によって異なる運営をすることで収益の最大化を図った。

運営はマスターリース契約を行った上で運営業務を外部へ業務委託し、固定賃料とすることで安定した利回りを確保し投資向けにも優位な商品とした。

上記の特色ある手法で高い稼働率を達成することを目的としている。

CONCEPT ■外観　京町屋に見られる外観表現方法である格子をイメージしたファサードは、視線をゆるやかに遮り、景観に溶け込むように配慮している。

CONCEPT ■１階【カフェ&バー/レセプションカウンター】　五山を連続させたシルエットを長さの異なる竹を並べて表現したアプローチ。お祭りのように華やかな箔を施した、客室数と同数の京提灯が彩る天井と、目を見張る巨大な提灯が光るレセプションカウンター。朝と夕で暗転するGOZANオリジナルの襖等、日本の伝統工芸や職人技が光る空間とした。

CONCEPT ■３階－５階【客室】　竹林に見立てた吊竹天井の廊下をくぐり、客室へ向かう。客室には、それぞれに違うデザインの扉サインロゴに呼応した唐紙(襖)が施されており、金泊と銀泊を使用した天井にもそれぞれのロゴを施した製作照明が柔らかく室内を照らす。コンパクトでありながらも心地よい空間は京町屋のような佇まいを創造する。※B-C室とD-E室間は、コネクティングルームとなっており、家族やグループでの利用にも対応できる。

CONCEPT ■６階【客室】　客室前にはオリジナルで制作した吹きガラスのペンダントライトを設置。各部屋にそれぞれのテーマを持つ「庭」があり、露天風呂を楽しめる紅葉が綺麗な庭。花見が楽しめるようにテーブルを設置し、食事をしながら桜を愛でることが出来る庭。象徴的な松を配置し、枯山水をイメージした庭となっている。庭のメイン樹種「向陽・桜・松」を華やかな絹布紙(きぬふし)に木版を摺り、襖として象徴的に使用している。

商品性を高めるため、ただ問題を解決するだけでなく６階の撤去した部分をそれぞれのテーマを持った吹抜けの箱庭として、露天風呂と紅葉、和傘を配した部屋、食事をしながら開放的な花見が楽しめるよう庭にテーブルを置いた部屋、枯山水をイメージした庭に象徴的な松を配置し照明計画で緩やかな時間を表現した部屋を計画した。

また海外に向けたわかりやすさを引き立たせるため、20㎡程度というコンパクトながら、「京町屋」になぞらえて和の素材や職人技など京町屋の要素を表現することで心地よく感じられる空間とした。

日本文化を感じてもらうため部屋に入ると上框があり、そこで靴を脱ぐといった動作の中に和の要素を含ませた。また室内には障子、襖など視線を遮りながら光を取り入れる和のしつらえを施した。各部屋に異なるロゴをデザインとして、襖・照明器具・入口扉・カラースキムを展開することで、部屋ごと特別な表情が見られ、同じ間取りでも異なるデザイン、異なる配色をすることで宿泊客の他の部屋への興味を引き立て、リピーターへとつなげる工夫をした。