平成29年 年頭所感
一般社団法人 全国住宅産業協会
会長 神 山 和 郎
謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
昨年発生しました熊本地震、度重なる台風による土砂災害や浸水害で被災された方々に心からお見舞いを申し上げます。
我が国経済は、外需主導によるところが大きく、中国経済の減速、イギリスのEU離脱、アメリカ新政権の誕生等により、景気の先行きに不透明感が増幅しています。また、内需を支える個人消費は、企業業績や雇用状況の改善、賃上げ等による効果が期待されていますが、社会保障の将来への不安感から生活防衛意識が高まり、消費意欲に十分結びついておりません。
住宅・不動産市場は、新設住宅着工戸数は全体として堅調に推移しているものの、相続税対策などから貸家の供給は増加していますが、分譲マンションは需給ともに低調な状況が続いております。加えて、資材価格や労務費が横ばい基調にあること、事業用地の取得難などから、新規の住宅市況は一層厳しさを増しております。
本年4月からの消費税率10%引上げが2年半延期になり、住宅に係る税負担増の緩和及び反動減対策として住宅ローン減税の拡充、すまい給付金、贈与税の非課税限度額を最大3,000万円とする措置も同様に2年半延長となりました。この間、引上げまでの時間を活用して不動産取得税を始め、多重な課税の排除を含む住宅と消費税のあり方について、是非、抜本的な検討がなされることを強く期待したいと思います。
昨年3月には、少子・高齢化の急速な進展を背景に住生活をめぐる現状と今後の課題を踏まえ、新たな目標と基本的な施策を内容とする新しい住生活基本計画が定められました。結婚・出産を希望する若年世帯・子育て世帯が安心して暮らせる住生活の実現、建替えやリフォームによる安全で質の高い住宅ストックへの更新、住宅地の魅力の維持・向上等が目標として掲げられました。これら計画の目標は、市場を通じて実現されることが基本であり、民間事業者としてその重要な役割を果たしていきたいと思います。
住宅政策上、空き家問題が大きな課題となっておりますが、空き家数820万戸にのみ主眼が置かれ、新築不要との意見も散見されます。簡単な手入れで利活用可能な空き家は、おのずと絞られかなり限定的であると推定されます。老朽化・腐朽が進みリフォームによる更新が不可能な場合は、計画的な解体・撤去を推進し更地にする必要があります。
特に、今後はマンションの空き家問題が懸念されております。建築後50年超の分譲マンションは、10年後51万戸、20年後には151万戸に急増すると見込まれています。建築時期が古いマンションほど空き家率が高く、適切な維持・管理機能が低下し共用部分の電気が消え、エレベーターが止まるなど、防災・治安・衛生面等の問題が顕在化しスラム化の進行が避けられません。空き家住戸を抱えたマンションは、やがて流動性のない負の資産となってしまいます。
修繕積立金不足や機能の陳腐化により大規模修繕が困難なマンションは、建替えを促進することが必要です。その際、建替えが円滑に進まない理由の一つに多額の費用負担が挙げられます。建替えを積極的に促進するためには、参加する事業者の事業意欲が高まることが不可欠であり、容積率の特例制度(ボーナス)について本格的な検討が望まれます。経済効果及び良質な住宅ストックの形成を促進する観点から、建替えも含めた新しいニーズに対応した新築住宅の供給を促す施策も重要であると考えます。
昨年12月、平成29年度税制改正大綱が公表になり、買取再販で扱われる住宅取得に係る不動産取得税の特例措置の延長、住宅用家屋の所有権保存登記等に係る登録免許税の軽減措置の延長、既存住宅のリフォームに係る特例措置の拡充、特定の事業用資産の買換えの場合の譲渡所得課税の特例措置の延長、優良住宅地造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得課税の特例措置の延長などが実現したことは、住宅取得者の負担軽減を通じて、良質な住宅供給に寄与するものと思います。
また、同じく12月に、会員の皆様の協力により34,000名余の署名活動を展開し、法案の早期成立の実現を強く要望してまいりました無電柱化の推進に関する法律案が成立しました。今後、国、地方公共団体、事業者、国民の連携により無電柱化の進捗率が上がることを期待するものです。
いうまでもなく安全・安心で良質な住宅を供給することは、われわれ事業者の責務であり、国民の豊かな住生活を実現するため、全力で取組んでまいる所存です。
全国の住宅供給の一翼を担う中堅企業の結集団体として、会員の英知と熱意を結集し、協会活動の充実に一層努めてまいりたいと存じます。会員並びに関係の皆様方の倍旧のご支援とご協力をお願い申し上げます。
最後になりましたが、皆様方のますますのご発展とご健勝を祈念申し上げまして、新年のご挨拶とさせていただきます。